2018年5月18日金曜日

「日本産馬」サクソンウォリアー。と血の飽和

英ダービーで一番人気になっていて話題なのが「日本生まれ」のサラブレッド、サクソンウォリアーです。

父にディープインパクトを持つこの馬は昨年デビュー。今年初戦。ぶっつけでイギリス2000ギニー(1600m「直線」。そう1600!の直線コースで争われます。距離は短いけど日本で言えば皐月賞にあたります。)一番人気で迎えたこのレース、サクソンウォリアーは早め先頭に抜け出すとそのまま押し切って圧勝。ブックメーカーはイギリスダービーの本命としています
 
9番の馬がサクソンウォリアー
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日本生まれ、とはいうものの、サクソンウォリアーの場合は、アイルランドの馬主兼生産者(ただし世界最大級)が所有する母馬をわざわざ日本に空輸。ディープインパクトを種付けして日本で出産。そしてすぐにアイルランドに戻して調教してイギリスでデビューしたというわけです。

日本産」とは言え、向こうの感覚では「アイルランド産」の馬ではあるでしょうね

こうなった(わざわざ日本に種付けに来るほどディープの評価が上がった)のには複数の理由があります。

一つは勿論ディープインパクト(そしてサンデーサイレンス)の優秀さがあるでしょう。日本でのレース実績、生産馬の成績。

あるいはディープ自身も海外で勝ち負けしているように日本のサラブレッドの海外での成績も20年前より明らかに良くなりました

さらに僕が思うには、日本でトップクラスの外国人ジョッキーが騎乗するようになったのも大きいと思っています。欧米の一流馬に騎乗する彼らが「日本の馬は強い」と言ってきました。
勿論ある程度はリップサービスでしょうが、実際に騎乗する彼らの説得力は非常に大きいのでは?と思います
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さらに別の側面もあります。

「血の飽和」です。競馬の歴史では「セントクレスピンの悲劇」と言われる「パラドックス」です。
優秀な種馬が現れると、、種付けするべき牝馬にもその血が入ったうまが多くなります。
種馬自身、あるいはその子供も種馬として成功する、しかしその孫が種馬になる頃にはもとの種馬の血を持った馬が母馬になっていて、急速に成績を落とすのです。

ヨーロッパでは、ノーザンダンサーという馬が大成功。(日本でもノーザンテーストが種馬として君臨しました)さらにその直仔の「サドラーズウェルズ」が90年台、2000年台前半の生産を圧倒的にリードしました。さらにサドラーズウェルズは「ガリレオ」という後継を産み残します。ガリレオは現在もヨーロッパに君臨する種牡馬です。

しかし。サドラーズウェルズ、ガリレオが長く君臨したために「血が飽和」しつつあるんですね。そこでガリレオを父に持つメイビーという牝馬を日本に送って生まれたのがサクソンウォリアーというわけです。ヨーロッパも、「脱ガリレオ」しないと生産が行き詰まってしまう。そこで目をつけたのがヨーロッパには殆ど入っていないディープインパクト(あるいはサンデーサイレンス)のDNAというわけです。
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逆のことは日本(社台グループ)にも言えます。「ディープインパクト(あるいはサンデーサイレンス)」が飽和していくんです。
社台グループはディープインパクトの血が濃くなりすぎないよう、ディープ牝馬の所有をある程度制限しつつ、海外から積極的に高額な母馬の購入を進めています。これはある意味時間稼ぎ。
そしてディープインパクトの「代わり」になりうる種馬の購入にも積極的です。

先日紹介したハービンジャーもそう。ディープインパクトの成功に浮かれることなく数年先、10数年先の牧場経営を見据えているわけです。(これはノーザンダンサー全盛期にノーザンテーストの後継種牡馬としてトニービンやサンデーサイレンスを買ってきた彗眼に通じます。)

しかし、実際問題として、当分はディープインパクトやサンデーサイレンスの血を引く活躍馬が続くでしょう。後継種牡馬や牝馬が続々続きます。手を拱いていてはいずれ飽和するのです。
社台グループ(大げさに言えば日本の競馬界)は増えすぎたディープインパクト(サンデーサイレンス)の血を海外に輸出するくらいでないといけないのかもしれません。

(すでに日本の仔馬の競り市に積極的に海外の馬主を招待して馬を買ってもらっているのもディープの血を外に出す流れと言えるでしょう)

サクソンウォリアーが競争で成功しあるいは種馬としても成功するなら、日本で生まれたディープインパクトの血を引く種馬や牝馬が「正当な値段で」海外に買われていくケースも増えていくんでしょうね。
これこそ日本が望んだ「競馬の国際化」と言えるんでしょう。

これから、ディープインパクトの「孫」は海外で活躍するかも知れません。むしろ日本よりも。
セントクレスピンがそうであったように。

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サンデーサイレンスの輸入が日本の競馬を変えました
おそらく僕が死ぬまでにまた、サンデーに匹敵するような種馬がさんでーの血を引かない馬から出てくることにはなると思います

しかしそれは偶然からではなく、生産者が必死になって探してきてその座につく。
生産者の彗眼、サンデーサイレンスを見初めたような、うまのポテンシャルを見抜く力を必要とするのです。

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