2018年1月10日水曜日

ラジコン話おまけ。「トマホーク」と「オプティマ」の間に

さて、長々と電動ラジコンオフロードカー「トマホーク」の話を書いています。オリジナルのトマホークは1983年発売。ラジコンカーによるレースはそれまでも色々行われていたのですが、最初は1/8サイズのエンジンカーによるレースが主流でより敷居が高かったのです。

しかしトマホーク(やその前身のスコーピオン)の登場は1/10という比較的には手頃なサイズ、しかもバッテリーとモーターで動く電動カーは燃料やエンジンと言った扱いの難しい要素を取っ払い、価格はともかく未成年(小学生)でも扱える「レース用ラジコンの普及」でもありました。電動なので子供でも扱える。水さえなければ走るところを選ばない。空き地とか公園に線をひけばレース場が出来上がる。
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さて、世界的に電動ラジコンでラジコンカーレースが行われるようになると、レースで勝つために各社からより高性能な電動のラジコンオフロードカーが開発、発売されました。競争が性能向上を生んだ1984年、85年ころは最も熱い時代だったでしょうか。

新車が出ていきます。
1983年にはヨコモから「ドッグファイター」が発売され、今ではラジコンヘリメーカーとして知られるヒロボーが「ロックンシティ」を世に送り出します。


ヨコモのドックファイター。4WDですが実は「簡易的なパートタイム4WD」。フロントタイヤはチェーン駆動ですが、フロントの方がややギヤ比が低くなっています。そしてフロントアクスルには「ワンウェイクラッチ」(自転車の漕ぐ部分に入っているのと機構的には同じヤツ。漕ぐ速度よりタイヤが早く回転するとタイヤが空回りしてペダルが動かないが、ペダルを早く漕ぐとタイヤはペダルによって駆動されるあれ)
ふだん、リヤタイヤがグリップしている時はフロントタイヤは空転している後輪駆動で走ります。そしてスタートでリヤタイヤが空回りしたり、コーナー、あるいはコーナーから加速してリヤタイヤが空回りする時はフロントにも駆動力が配分されるというわけ。安定を失うような場面でフロントが駆動して助けてくれる、そんなイメージの車でした。
(これを新天地はもっていました)

設計もよく考えられていました。
モーターをシャーシに直付しない、モーターを取り外しやすくギア比の変更が容易などレースを考えた作り。
そのほか「モノショックサスペンション」「ウイング」「アンチロールバー」「モーターミッドシップ搭載」などなかなか先進的な作りでした。

(スリッピーなフラットなダートでは速かった。でもどうしても重いことやサスペンションの絶対性能、などが後々足を引っ張ることになります。)
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ロックンシティ


いまでは農薬散布のラジコンヘリとかで有名なヒロボーも35年前はラジコンカー作ってワークス活動してたんです。信じられないでしょ。
ヒロボーはベルト駆動のパイオニア。ベルト駆動のマシンを世界で初めて夜に送り出したのがこのロックンシティ。それだけでなく、モーターからセカンダリへのつなぎもベルトを使って行うという独創的な設計です。

モーターからベルトをつかって「減速」している機構がわかるでしょうか?
この機構はモーターを固定したまま、ピニオン(最初の)プーリーを変更すればギヤ比が容易に変更できるというメリットもありました。ただ駆動効率はギヤのほうが優れているような。。。
リアのダブルウイッシュボーンも1983年としては画期的な作り。ただ繊細なこの部分がこの車の弱点でもあった気がします。


フロント。タイミングベルトでフロントを駆動します。フルタイム4WD。ただし、センターデフや駆動配分装置を持たないこの車はコーナーで独特の挙動を見せました。前輪が直接駆動されることで、上手く曲がらせるにはある程度のテクニックが必要になるのです。4WDによるアンダーステア(ハンドルを切っても外に膨れるように走って曲がりにくい)。
それを避ける為、具体的にはコーナー途中でパワーを抜くと「タックイン」といってフロントが内側に切り込むような挙動をします。それを積極的に利用して上手く車の向きを買えるのです。コーナーではFF的な走りだったですね。

この車のダブルウイッシュボーンサスペンションをつかって田宮のホーネットを独立サスペンション化する改造が流行ったそうな。
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レースシーンを4WDが席巻する中、トマホークを発売していた京商は1984年に4WD(そしてついでに後輪も操舵する4WS)のプログレス4WDSを発表しますが、その性能は正直あまり芳しくなかったのです。
プログレスはそれまで京商から委託を受けて開発していたところとは別のところが開発したとも・・。
本当かどうかはしりませんが・・・。



そして1985年には田宮が画期的なシャフトドライブ4WDマシン、ホットショットを発売。

この頃どんどん発売された「次世代」の4WDマシンによって性能競走は一気に加速していくのです。
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トマホークの後、1984年や1985年上半期、京商はもっと性能の良い4WDマシンを投入できたのに「あえて見送った」とも言われているそうです
一説には、京商は「1/10電動オフロードカー」の性能が一気に上がりすぎること、を恐れたとも。毎年と言うか4半期毎に高性能車が登場し、その性能があまりにも高度化しすぎると、ついていけなくなる顧客がこのカテゴリーから離れていってしまうんではないか?スピードが上がりすぎるとコントロールするのが難しくなるわけで。

そんな高性能化競走のなか、1985年に第一回の電動オフロードカー世界選手権がたしかアメリカで開かれます。この時優勝した車がヨコモのドッグファイター(を魔改造した車w)。シャーシーをカーボン化して強度をましながら軽量化、前後に大容量のオイルダンパーを採用するなどキットの数倍のお金をかけた車だったと記憶しています。
(のちにワンダードッグファイターとしてレプリカが発売)
(マニアックに言うと、オイルダンパーを高性能、大型のものに交換。リアはモノショック(左右でダンパーを共有)から独立してダンパーを配置。シャーシの材質、形状を変更(世界線では確かカーボンを使っていたが、レプリカでは生産性とコストで見送りしたのかな)。面白いのは「バンパー」が小型化されたこと。大型のバンパーは車体保護にはとても有効なのですが、レースでは空気抵抗になるし、ジャンプの後の着地で引っかかって転倒の原因になります。なので最低限の大きさに変更してますね。これはこの後出てくる車たちに大きな影響を与えました。

また、ボディもオリジナルとは違います。電動オフロードカーで「空力」を意識した初めてのクルマかもしれません。ウイングの有効性は知られていましたが、当時はまだオフロードカーのボディは様々なかたち、あるいはパイプフレームの車があるくらいで、ボディの形までは意識されていなかったのです。

現代ではみんなほとんど同じ形のボディになっています。空力てきには行き着いちゃったんですね。

何はともあれヨコモにとっては「世界選手権優勝」という宣伝文句はけっして小さなものではなかったと思います。
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これをみて京商もようやく次世代の4WDモデル「オプティマ」を発売するのです。(1985年)一説にはゴーサインを出せば世界選手権にオプティマのプロトタイプモデルを出すこともできたし、そうすれば「勝てた」とも。

勿論、噂ですが

世界選手権の後、満を持して発売された初代オプティマはその高性能さやメンテナンス性などの素晴らしさであっという間にシェアを握ります。

なおこの頃には4WDと2WDの差が開きすぎていて「別のレースカテゴリ」として扱われるようになっています。)

 
(余談ですが、オプティマも復刻されて発売されています)
 
 
チェーンでフルタイムで4輪を駆動。(後により駆動ロスが少ないベルト駆動部品がオプションで登場しました)
サスペンションはジオメトリを変更可能なダブルウィシュボーンを前後に採用。コーナリングを考えるとダブルウイッシュボーンのサスペンションは「行き着く先」だったと言えるでしょう。サスペンションも含めて「低い」車体は低重心を強く意識していますね。
トレッド(左右のタイヤの距離)は従前よりかなりワイドになり、明らかにコーナリング性能の向上を狙っています。
ワイドアンドロー。実車のレースカーでも大事な設計のポイントです。
 
前後のバルクヘッドが「サブシャーシ」を兼ねその部分が強度も担当することで分離、整備性を良くし、軽量化にもつながっています。レースでは壊れた部分を素早く直したり、路面に合わせてセッティングを変えることが重要。合わせて軽く丈夫な車体構造。素晴らしい設計と言えるですね。
 
それまで、特に後輪のサスペンションは構造がかんたんなセミトレーニングアーム方式が主流でしたが、整備性やセッティングをも考慮して設計されたオプティマのダブルウィッシュボーンサスペンションは素晴らしいものだったですね。オイルダンパーもトマホーク時代より明らかに長く大きく高性能になっています。
アッパーロッドを取り外して長さをかえるだけでキャンバー角(タイヤを前から見て「ハの字」にする)の調整も簡単に行なえます。整備性も素晴らしい。
 
 
 
ただ・・・・。
この頃には「マッチドバッテリー」といってニッカド電池の「当たり」のバッテリーだけを使うことや高性能FETコントローラーが登場したり、高性能モーター(マブチのRS540が1200円くらいなのに、高性能モーターは数千円から数万円した)が登場したりと電動ラジコンは一気に性能や価格が上がっていくのです。
 
結果、オプティマ自身は結構な成功を収めますが、ラジコンカーブームというのはこのあたりを最後に下火になっていったのでした。。。。京商が懸念したように?あまりにもマシン性能(とコストも)が高度化して子どもたちがついていけなくなるんです・・。
 
このあとオプティマはモーターをミッドシップに搭載した「オプティマミッド」なるモデルもあります。このあたりで形的にはある程度行き着いたといえるかもですね。
 
ミッドシップ、4WD、前後ダブルウイッシュボーン構造。そして強固な車体。ある意味では実車のレーシングカーそのものとも言えるかもです。
 
 
 

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