2017年3月7日火曜日

現役最古の軍艦?インドのヴィラート引退。

現役としては「世界最古」とも言われるインドの空母ヴィラートが退役。(旧ハーミス)


「彼女」は空母としてはもちろん世界最古。おそらくまともに動いていた軍艦すべての中でも世界最古級です。

もともとはイギリスで作られた空母で、ハーミーズと言いました。
なんと起工は1944年。そう、第二次世界大戦の最中という古参の軍艦なのです。
彼女は本来、最古参になるどころか、進水前にスクラップになるかもわからない船でした。
しかしいろいろな要素が彼女の数奇な人生をつくっていくことになります。


イギリスは日本との海戦や日米が繰り広げた空母戦(真珠湾の奇襲や、ミッドウェー海戦、その後のアメリカ軍の圧倒的な勝利など)の戦訓から、空母の建造を進めます。
なんどか書きましたが、大和クラスの大型戦艦でさえ主砲の射程は50キロ。しかし飛行機なら
数百キロ遠くから攻撃できる。時代は戦艦ではなくなっていたのです。

そこで生まれたのが「ハーミーズ」を含む「セントー級」空母建造計画でした。
全長は200m、排水量は3万トン弱と現代の基準から言えばいわゆる「軽空母」に属する船ですが、これを8隻作ることでイギリス海軍の航空戦力を維持しようというわけです。

しかし。欧州の戦局は英米有利に進みます。もはや「イギリスに空母は必要ないんじゃないか?」
と思われる中でセントー級ハーミスの建造が1944年に始まるのです。
結局イギリスはセントー級8隻の計画を大幅縮小することに決めます。

まず4隻の建造がキャンセル。そして終戦。ハーミーズも終戦と同時に建造が一時ストップしてしまいます。建造が始まった船台の上で長らく晒されていました。あるいはこのままスクラップになっていたかもしれません。

が、1953年、造船台においておいてもじゃまになる、ということで船体部分の建造が進められ「進水」。その後も遅々として建造は進みませんでしたが東西冷戦などもあり1959年ようやく就役するのです。実に建造開始から15年という異例の長さとなりました。
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しかし、もともとプロペラ機の時代に設計された船。時代はジェット機に変わっていたのですが、ジェット機を運用するためには船が小さく、またアメリカのように「蒸気カタパルト」の技術を持たないイギリスにとってはまともな戦力としてはあまり期待できない、そんな船でした。イギリスは当初の固定翼機の空母としての使用ではなく、ヘリコプターなどと組み合わせて強襲揚陸艇としてハーミーズを運用します。高いお金をかけて作ったのに実力は発揮されない。
無用の長物になるのか?


しかしハーミースの一生を大きく永らえさせる飛行機が登場します。
「垂直、短距離離着陸機」ハリアーです。

イギリスとしてはこれを艦載機として使用しない手はありません。
ハリアーはエンジンを下向きに可変させて噴射することで垂直に上昇できます。
しかしそれでは効率が悪い。燃料消費が多すぎるし積載量もへる。
垂直離陸ではなく短距離離陸にすればどうか?
そこでハリアーのエンジンを斜め下、後方に向けて噴射、そして船の先端に「スキージャンプ」と呼ばれる「坂、ジャンプ台」をとりつけることで 200メートルと短い全長のハーミーズでもハリアーが離陸できるようにしたのです。(着艦するときはストンと垂直に着艦できる)

これによってハーミスは軽空母として蘇りました。有用な防空力、攻撃力を保つことが出来る、と。イギリスはその後ハリアー運用に特化した「インビンシブル」クラスの軽空母の建造に着手。ハーミスはインビンシブルクラスの就役をまって81年にも引退することになる。

はずでした。

ここでさらに彼女の寿命を延ばす事態が発生します。

そう、80年台から始まったフォークランド(マルビナス)をめぐるイギリスとアルゼンチンとの緊張激化、そしていわゆるフォークランド紛争の発生です。

イギリス軍は就役したばかりの軽空母インビンシブル、そして引退するはずだったハーミーズにシーハリアーを搭載して戦地に向かわせます。
ハーミーズはイギリス艦隊の旗艦となる栄誉に浴します。

イギリス軍がハーミースとインビンシブルに乗せていったハリアーは総計で28機だったと言われています。
初の実戦投入となったハリアーは、アルゼンチン空軍と対戦すると空対空戦闘では23機を撃墜、一方で空対空戦闘による被撃墜はゼロ。「黒死病」とまで恐れられる一方的な戦果をあげたのです。フォークランド紛争でイギリスが勝つことが出来た大きなファクターとなったのでした。
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その後、ハリアー搭載軽空母は注目を集めます。
ハーミーズはインドに売られ、インドはハリアーも購入。インドの艦隊防空の主戦力として21世紀まで生き延びます。
そして2017年の今年まで生き延びてきたというわけです。

さすがにこんな長寿命の軍艦はもう現れないかもしれないですね。
おばあちゃん、お疲れ様でした。

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