2016年7月14日木曜日

血の飽和と新しい血の台頭の待望

セレクトセールが活況のうちに終わりました。二億円超えが続出し、3億円に迫る馬も複数。

セレクトセールは日本の馬の生産最大手である社台グループが中心になって行う競り市です。sや大ファーム自慢の良血馬がどんどん売りに出されるため、非常に活況を呈しますし、高額の取引も多い。今年はモハメド殿下やクールモアスタッドなど世界的に有名なオーナーブリーダー(生産も行う馬主)が競りに参加し注目を集めました。

ホンの20数年前まで、競走馬の売買は「庭先取引」という形で行われました。牧場は「長年の付き合い」を重視しお得意様だけにいい馬を売る。いい馬と抱き合わせで他も買ってもらう。
あるいはいい馬は売らなくて自分で所有して走らせる。

逆に一見さんがいくら大金を積んでもけんもほろろ。相手にされないなんてことも往々にしてありました
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それを変えようとしたのが「セレクトセール」だったのです。これを始めた社台グループは、自分のところの最もいい馬こそセリに出し「お金さえ払えば誰でもいい馬を買える」という事を始めたのです。今考えればそんなの当たり前やん、と思いますが昔は当たり前ではなかった。

三冠馬ディープインパクトもセレクトセールで買われた馬。それより数年前ならこの馬を買うということはお金以前に「付き合い」が必要だったでしょう。
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本題

ことしのセレクトセールではディープインパクト産駒が人気を集めました。何頭も二億円を超える価格がついたのは「異常」な気もしますが、社台ファームは世界中からG1を勝った牝馬を買い集めてきて子供を生産していますし、今年のダービーを見ても「ディープインパクト✕良血馬」が多く他の馬では対抗できない雰囲気さえありました。人気が集中するのも致し方ありますまい。

さらのこの20年で「種付け技術」も大きく向上しました。
昔は年間100頭も種付けできれば「多いなあ」と言う感じでしたが、いまは最大で200を超える種付けをこなす種馬もいます。(昔は三回くらい種付けしないと受胎しないこともあったが、いまは一回で受胎することが多い。またハイセイコーの父チャイナロック(性豪というニックネームあり)やサンデーサイレンスのように「何度も種付けしても大丈夫」「受胎率が高い」というのもそれは種馬としての大きな資質の一つとも言える。(逆にメジロマックイーンの父メジロアサマのように「受胎率が極めて低い」うまはいくら優秀な遺伝子を残せる馬でも種馬としては成功できないだろう)

結果、人気のあるサンデーサイレンスの血族、なかんずくディープインパクトの子ばかりが増えてしまう。短期的にはそれでいいんです。でも10年、20年先を見たら???
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過去、1980年台にはノーザンダンサーが生産界を席巻しました。日本でも社台ファームが擁した「ノーザンテースト」が何年にもわたって種牡馬のトップに立っていました。社台ファームは「父ノーザンテースト」という牝馬をたくさん抱えることになります。これらの牝馬には当然ノーザンダンサー系のたね馬はつけにくい。近親交配が強くなるからです。

そこで社台ファームは稼いだお金で積極的に種牡馬を買うことにしました。そのうちの一頭がトニービンであり、サンデーサイレンスだったのです。
特にサンデーサイレンスは稀有な競走成績を持ちながら、血統的には種牡馬として成功しにくいと思われていました。しかし自分の目を信じて吉田善哉氏はサンデーを10億円超という破格の値段で買い付けます。彼はサンデーの仔が勝ちまくることを見ることなく亡くなりましたがその眼力の御蔭で日本の競走馬の質はとんでもなく上がったと言って良いでしょう
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そう、日本の競馬生産界が次にスべきことは「優秀な種馬」ということになるんでしょうかね。あるいは今こそ海外から非サンデーサイレンスな優秀な牝馬を連れてくることかな。

そういう意味で先日ブログでも「非サンデーサイレンス」の新種牡馬を取り上げてみたわけです。
今のところ、ルーラーシップ産駒の良さが目につきますかね
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おまけ
偉大な種牡馬はたいてい「性豪」なんですが(ノーザンダンサーもそうでした)、極稀に全然種付けが好きじゃない馬が歴史、血統表に大きな影響を与えることがあります。

最も有名なのは「ザテトラーク」という馬でしょう。芦毛の馬は優性遺伝なのですが世界的に見てもかつやくしている芦毛の馬はたいていこのザテトラークという馬を血統表に持っていてここから芦毛をけいしょうしている事が多いのです。(芦毛の馬はすくなくとも両親のどちらか一方が芦毛でないと生まれない)。
それどころかザテトラークはサンデーサイレンスやノーザンダンサーの血統表にも登場します。

七戦して負けなしのスプリンターだったザテトラーク。

この馬は種付けが嫌いだったらしく、「本当は射精してないのにいかにも射精した振り」をする小狡いやつでw年間数頭しか子供を作ることが出来なかったのです。生涯でも100数十頭しか子供を産んでいません。ところがこの仔馬たちが走りました。中でもザテトラークの娘が産んだマムードという種馬が大きな影響を与えるのです。マムードはノーザンダンサーの血統表にも登場しますし、サンデーサイレンスはマムードのクロス(父方にも母方にも先祖にマムードがいる)を持っています。血統的に言えば、サンデーサイレンスの爆発的なスピードはマムード(あるいはその母父ザテトラーク)によってもたらされたとも言えるでしょう。

種付け嫌いだったザテトラーク。かれがもう少し種付けが好きだったら?あるいは更に種付けが嫌いで全然タネを残していなかったら?
世界の競馬シーンは今とは全く違ったものになっていたでしょうね。

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