2016年2月2日火曜日

可変翼

翼の話をしたので最後に可変翼のお話

はい、全く相場の役には立ちません。暇な人は読んでください。
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映画、トップガンを見た人は多いと思います。今となっては古い映画ですが名作でしょう。
海軍のパイロットの中でも優秀な人を集めて集中的に教育し、その人達がまた部隊に戻ってその技術を伝える、そんな仕組み。そのパイロットたちの物語。大ヒットしました。

アメリカ海軍も協力したこの映画で「もう一つの主役」であるのが当時のアメリカ海軍の主力戦闘機F14「トムキャット」です。F15と違うところはF15が徹底的に戦闘機同士の格闘戦闘に勝つことを目的(異論は認めない)として開発されたのに対し、F14は「要撃」が再優先でありました。

どうゆうことかというと、アメリカ空母を沈めるために敵(当時は旧ソ連)はたくさんの攻撃機から対艦ミサイルを大量に発射(飽和攻撃といいます。対空砲の限界を超えてたくさんミサイルを打ってこようと言うわけです)してくるだろうと。
それに対して「フェニックスミサイル」という長距離ミサイルを搭載。多数の敵機を同時に認識処理する管制装置で敵を捉え一斉に攻撃すると言うものでした。先手必勝というわけです。



大型の機体に大推力のジエットエンジンを2つ搭載。ストレーキを持ち、さらに胴体全体で浮力を発生させる(ブレンデッドボディ)デザインや、垂直尾翼二枚というスタイルは同時期に開発された空軍の主力戦闘機F15とともに、その後の大型戦闘機のトレンドになっていきます。

(おそらく設計の着想に大きな影響を受けたであろうロシアのSu27シリーズ、Mig29シリーズ。あるいは米国のF18や最新の戦闘機F22なども双発エンジン、2つの垂直尾翼を採用しています。後の戦闘機設計に与えた影響は大きなものがあったと言えます。)


そしてF14の機体の最大の特徴は「可変翼」の採用です。

横長の翼は揚力を得たり、飛行機の回転半径を小さくするのには有利ですが速度を出すには不向きです。逆に縦長の翼は速度を出すには有利ですが、揚力を得たり、回転半径を小さくするという意味での機動性で不利。

そこで必要なときに翼を広げたり閉じたりすることで最大限の性能を発揮しようと言うのが可変翼です。
F14の三面図。翼の実線部分が最大に翼を広げた絵。点線部分が翼を閉じた(後退させた)絵になります。なお、翼を交代させた時は飛行の安定性や機動性、揚力確保の目的で「補助翼」をだします翼を一番後退させた状態では、尾翼と合わせて「一枚のデルタ翼」のような状態になるのが特徴ですね。


例えば、離陸の時。翼をひろげることで揚抗比をアップ。浮力を多く得ることができます。
浮力が大きければ、離陸時に燃料をより多く積めるし、武装も大く積める。


 
あるいは格闘戦になった時は翼を横に広げて回転半径を小さくできます。格闘戦という意味で機動力が最大に発揮できるのです。あるいは翼を広げると「ブレーキ」の役割を果たし、後ろにいた敵を自分の前に出してみたり。
 
しかし翼を広げると空気抵抗がまし、速度が落ちます。そこで翼をたたむことで一種の
「デルタ翼」に形が変わるのです。こうすれば抵抗は最小限になります。加速したり、高速巡航するときはこの形がベスト。高速で飛べればいち早く敵を射程圏に捉えることもできます。守備範囲も広くなる

それまでの可変翼機は、手動で翼を動かしていましたが、F14ではこれをコンピューターが制御。
加速時に翼をたたんだり、格闘戦に入るとコンピューターが自在に翼を動かしもっとも有利な角度に調整してくれるという便利なものでした。


おまけの機能として、空母に搭載しているときは翼をたたむことで横幅を小さくする、という副次的なメリットもありました。艦載機は多くの場合翼が途中で折れる構造になっています。
 
(写真はF18ホーネット。このように翼を折れる構造にしてあり、空母に少しでも多く積めるように省スペース性が考慮されている)
 
可変翼なら、翼を後退させる事で横幅が小さくなるというわけです
 
 
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話を聞くとすごいメリットでしょ。じゃあなぜこの「可変翼」が現在の飛行機からは消えていったのか。
 
重くて複雑で高くて整備に手間がかかるんです。
更に言うと、ミサイル技術の向上やステルスの必要性、更にエアロダイナミクスの研究が進んで固定翼でも充分に速度が出せてある程度の機動性が確保出来ること。
 
さらに可変翼の翼部分にはミサイルや爆弾をぶら下げることが難しい。
F15Eのように羽にも沢山爆弾をぶら下げて爆装することが可変翼では難しいんです。
F111のように翼の向きに従って爆弾の向きを変える機種もあるけど、当然機構がさらに複雑になる。
事実上ムリなんですね。
 
 
さらに言えばミサイル技術の向上で、優れた機動性というのがそれほどは戦闘機に求められなくなったことも背景にあるでしょう。敵に見つかりにくく、敵の外側からミサイルを発射ししかるのちに高速で離脱する。
 
近距離で近寄って飛行機同士で格闘戦する時代ではなくなり、機動性が最優先ではなくなったと
。その機動性も可変翼でなくともある程度得られるまでエアロダイナミクスの研究が進んだ。それならあえてお金がかかって重くて整備に手間がかかる可変翼はいらないよ、と。
 
せっかく得られるメリットですが、その代償に失うものが多く、しかも今再優先で求められている性能ではなくなってしまったんですな
 
可変翼で現代の第五世代戦闘機を作るのは「割が合わん」と。
 
こうして可変翼機は絶滅して行く運命にあります。いま残っているのはイギリスなどが保有するトーネード。旧ソ連のSu24、Mig23 Mig27。イランが保有するF14などでしょうか。
マニアには残念ですがそんな所。
 
(折りたたみ式の携帯が消えて、一枚の薄っぺらいiPhone型の端末ばかりに修練していく携帯電話の世界になんだか似ているのかもしれませんね)

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