2016年1月25日月曜日

遺言と公正証書

産経新聞に「全財産」を家政婦さんに譲る、という遺言が有効かどうか実子と家政婦さんが争った民事裁判の判決の話が出てました。

多額の財産を相続したおばあさん。しかしその娘は、親の介護もしないで財産をたかります。おばあさんは住み込み(ただし無給)で働いてくれた家政婦さんに財産(減りに減って?3000万円ほど)を全て家政婦さんに残す、という遺言を残してなくなります。

しかし納得しなかった実子(二人)はそのお金や貴金属を持ち去り、家政婦さんは一文無しで追い出された。納得出来ない家政婦さんが「私に譲られた財産を返せ」と民事で訴えたというもの。
実子側は「遺言書を書いた時に、被相続人は意思能力に掛けた。遺言書は家政婦さんが実子の悪口を吹き込んで無理やり書かせたもの」と主張して遺言書は無効だと全面的に争ったのです。
逆に、数十億円夫から相続したはずなのに、被相続人が3000万円しか残していないのは、家政婦さんが使い込んだから。使い込んだお金を返せ!ってな反訴を出したのです。

色々調べた?所、実子側は生前、いろんな理由を付けて被相続人から資金援助を受けていたことが判明。さらには3000万円の資金援助とともに「これでお金出す(援助)のは最後」という覚書が存在したことや生前被相続人が「家を留守にすると、子どもたちに財産を持ちだされる」と周囲に話していたことも判明します。

家政婦さんがお金を使い込んだ、という主張に対しても、一文無しで追い出された状況を見れば「全くそのようなことはない」

そして介護も行わず。「そりゃ、家政婦さんに全財産残すよな」。「お前ら(実子側)が全部悪いんだから、裁判費用も全部実子側でもって。お金とか貴金属全部返しなさい。

裁判所も呆れというか怒りの判決です。


この話、ちょっとケースが独特すぎて結局遺言が100%認められた(状況証拠的に、遺言が適正であるとかんがえられる)のですが、それでも裁判でかなりの長い期間とコストがかかっています(一応、裁判費用は負けた実子が持てという判決)。こんな揉め事を避ける方法は無いのでしょうか?
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以前も書いたのですが、「遺言を公正証書の形で残す」のがもっとも効果的です。

新天地にて、を読んでいる方は資産家の人も多いと思います。ぜひ、健康なうちに遺言を考え、公正証書にしておくことを行政書士としておすすめしておきます。

「公正証書?なんだそれ」という人が多いと思いますが公証人という人に立ち会ってもらって作成する公的な証書で、その証書は「裁判の判決」と同じ効力をモチます。

つまり、公正証書ではない遺言を残しても「裁判」でその遺言書をめぐって争う余地ができてます。
結論として有効であったとしても、裁判を起こせば色々いちゃもんをつけれる場合があります(上記産経新聞に出てたケースでは「高齢で判断能力にかけてた」ってのが争われました。)
さらには実際問題、「有効でない」遺言というものが世間にはたくさん存在してきました。せっかく遺言したつもりが意味を成さないというわけです。

「有効な公正証書として遺言書を残す」と、有効な部分については裁判でも争えないのです。いや争うことは可能ですけどすぐ負けます。

(ただし例えば遺留分については、相続人が主張すれば法律の規定が公正証書に優越します)

これはちゃんとした証人二人以上が立会い、公証人がそれを見届けているから。「意思能力はありますね」と認められるんですね。公的な裏付けがある文書なのです。

もちろん「理論上は」きちんとしてない公正証書の遺言は効力がなくなるのですが、プロの公証人(公証人はたいてい裁判官、検察官、弁護士経験者です。あとは法務局長経験者とかだそうな)が関わるものですので、よっぽどのことがなければ大丈夫かな。
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公正証書(の遺言)はどうやって作ればいいか?直接公証役場に聞きに行くか、行政書士(ただし、公正証書を作り慣れた行政書士)または弁護士(同じく公正証書を・・)に相談するのが良いでしょう。
費用は応相談だけど、総額20万円くらいからあとは遺産の金額、規模とかによる、かなあ。(公正証書にするための法定費用とあとは行政書士(または弁護士などの士業の人)と証人その他の人の経費や人件費です)

一見高いようですが「あとで裁判(揉めた時)になった時に20万円ではとても買えない効力がある」ことを考えれば「安い」と思います。

公正証書にするデメリットは「費用が掛かる」ことくらいですかね。逆にメリットはというと・・・
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(余談ですが、とくにお金のやり取り、とかで公正証書の作成は有効です。500万円貸したけど返してくれない、じゃあ裁判、と言うのはとても面倒です。しかし公正証書を作っておいて、返さなければ取り立てるよ、としておくと、それ自体が裁判の判決と同じ効力、債務名義となります。強制執行まで出来るのです。応相談)
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最近は遺言を残す人も増えましたが、意外に多いのが「遺言が無効」であるケース。

きちんと法律(民法960条、その他)にしたがっていなかったので「その遺言は無効」とされたケースです。

いま思いつくだけでも・・・。

「ワープロ」これダメ。自筆で書きましょうね。

ビデオテープなどの動画、音声。これもダメ。

カーボン紙による複写も、法理論上は色々ある(有効という有力説もある)んですが「ダメ」って言う判例も出てます。

日付が「吉日」になっていて無効(遺言書は最新のものが有効になるため、日付が特定されない遺言書は無効)、あるいは日付は「自署」でなくていはいけません。(ゴム印で日付が押されて無効になった判例があります)







また、最近おもしろい判例で「二重線で遺言の一部が消してあった遺言」は全部有効なのか一部有効なのか、全部無効なのか、なんてのが争われたケースがありました。

新天地訂正。ごめんなさい、二重線じゃなくて遺言書全体にわたって、赤の斜線が書き入れてあった、という遺言書のケースです。遺産を長男に残す、という遺言だったのですが、斜め線はやっぱりやめる、という意志じゃないの?と長女が訴えでたケースでした。
地裁、高裁は単純に斜めに線が書き入れられているだけでは、遺言を撤回したと見るのは出来ない、と判断しましたが、最高裁が「斜線は遺言を撤回する意志」と判断し、この遺言は無効であるという判決を下しました。

はたまた、複数の遺言書が出てきて、どれが本当に有効な遺言書なのか争われる、なんてケースも有りますね。

公証人や士業の人間が間に入った公正証書の遺言書なら、こういうことは起こりえません

もちろん、公正証書にしてしまうと「おいそれと変更できない」というデメリットはあるかもですね。
ただ上記判例のように「どう変更したんだ?」という揉め事は起こりにくい
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さらに。
専門家が間に入ることで、「穴の少ない」遺言を作ることが出来ます。争う余地ができるだけないように「よく出来るように」アドバイスをくれるでしょう。

例えば子供二人いる。片方には一円も渡さない、という遺言を残そうと言うクライアントが僕のところに来たとします。僕なら「いやいや、全部よこさない、はやめておいたほうがいいですよ」とアドバイスします。なぜなら、遺留分というのがあって、子供ならその遺留分について、どんな遺言を残されても貰う権利があるから。
一円も残さない、なんてされたらもらえなかった方は裁判に訴えますし、泥沼になるし、結局遺留分についてはもらうことが出来ます。

それならば最小から「こういう理由でお前の取り分は遺留分(あるいはプラスアルファ)だけね」と遺言するほうが争いが起こりにくい。
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そのほか、こんな判例もあります。
個人事業主Aさんには子供Bがいますが、家業については親戚のCさん、及びCさんの息子のDさんが実質的に後を次ぐような形で手伝ってくれていました。

そこでAさんにはさんは自分が死んだらCさんに家業についての財産(店舗や設備)を譲ることにして普通の遺言書を作ります。(この遺言書自体は有効なものです)

ところが。Aさんより先にCさんが死んでしまいます。遺言書は書き換えられることなくAさんもその後死去。こうなったばあい、遺言はどうなるのか?
「後を継いでくれた人に店とか設備を残したい」という意志を尊重すべきか、死んだらだめじゃんという話か・・・。

有力な学説に「息子DさんがCさんの立場を相続して、DさんにAさんの財産が遺贈される」という考えもあります。

しかし判例は「あくまでAさんが遺言したのはCさんに財産を譲る」という話であって、Cさんが死亡した以上、その文言は無効。(なのでDさんには財産は遺贈されない)という結論を出しています。

どうすりゃよかったのか?まあ今からなら簡単に正解を言えます。
「○○という財産はCさんに遺贈します。ただし、Cさんが死んでいた場合はDさんに遺贈します」
という「二段構え」の遺言にしておけばよかったのです。なんなら三段構え、四段構えでも。。

大事なコレクションを、専門知識のある人(大切にしてくれる人)に譲りたいっていうようなケースでもこのやり方は有効でしょうね。専門家Aさんが死んでしまったら次善の策で専門家Bさん、というやり方も当然オッケーです。

僕に遺言書作成の補助を頼んでいれば、これくらいのアドバイスは出来ます。「穴の少ない遺言書を作る」ってのはそんな意味。「思わぬ?穴」を専門家は予め塞いでおいてくれます。
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詳しくは「遺産相続を得意とする」行政書士、もしくは弁護士にご相談くださいませ。

なおすでに泥沼になっている(相続が開始しているけどもめている)場合は弁護士一択です。
行政書士は裁判の代理人になれないんで。

貴方が遺言を書く立場でしたら、(裁判をあらかじめ避けるということで)おこのみで行政書士か弁護士か選んでくださいませ。

ただし、「遺産相続を得意とするかどうか」で選んでくださいね。(これ大事)

(この辺の知識はマニアックなので。例えば新天地は知識だけはあるつもりですが実戦経験は少ないんですね))
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おまけ。
大学の期末試験なんかで出ます。相続のミニテスト。

「遺言は何歳から出来る?」





答え 15才。
民法の961条に「十五歳に達した者は、遺言をすることができる。」とあります。行政書士試験で択一の枝の一部として出ても不思議ではないかなあ???

授業では必ず習うわけですが、基本中の基本すぎて意外にみんな「ど忘れ」してたりします(*^^*)
「義務教育を終えたくらいの年齢」で、人には遺言が出来る程度には意思能力が備わるという日本の民法の考え方なんですね。


おまけ2
今国会中にでも、「遺言控除」法案が提出される見込み。有効な遺言に基づいて相続が起きた場合、その一部について控除額を数百万円程度上乗せしようと言うもの。
これなら、数百万円以上課税対象がある人なら、税金が数十万円以上「お得」になるわけで、公正証書を作るお金くらいは結果として「減税」される余地が出てきます。あるいは減税額のほうが大きいお金持ちも出てくるでしょう。まあ、それは貴方(被相続人)が死んだあとの話ですけどw

行政書士や弁護士業界にとってはプラスな話。

政府がなぜこんなことをするかというと「スムーズな財産の移譲」で「景気を下支え」して欲しい。あるいは「介護してくれたから、その人に多めに財産を残す」という「仕組み」ができることで在宅介護が増え、政府負担が減るという遠大な計画があるとも言われています。

何はともあれ、「遺言」が増えるきっかけにはなるでしょうね

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