2013年8月12日月曜日

空母の歴史と「空母出雲」の衝撃(という利用価値)

軍事に詳しくない人のために。(長く役には立たない基礎知識です。でも一般教養ですw)

空母とは飛行機を積んだ船のことです。歴史は古く、さらに主役となったのは第二次世界大戦にさかのぼります。
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飛行機の発達は「制空権」という概念を生み出しました。速度の早い飛行機は遠くからやってきて自在に地上や海上の目標物を攻撃出来ます。しかし地上や海上からは効果的に反撃できません。高速で移動できないからです。結局、敵の飛行機を排除するには、味方の「戦闘機(飛行機を撃墜することが主目的の飛行機)を飛ばす」のが一番効果的。自分の空港基地の近くなら戦闘機を飛ばして敵の飛行機を打ち払うことができます。この敵の飛行機を打ち払うことが「制空権を握る」ということです。

一方船は世界中に移動して陸地や船を攻撃することができます。しかし空をとぶものを積極的に攻撃することはできませんでした。今と違って対空ミサイルというものはなく、レーダーもありません。高射砲で身を守るのがせいぜいだったのです。いっぽう、飛行機の技術の発達と魚雷や爆雷、爆弾技術の進歩で、飛行機が船を自在に攻撃する事ができるようになりました。また飛行機はレーダーのない時代、遠くを索敵する唯一の手段でもありました。戦艦と言えども、近くに飛行機が飛んでこられたら実に無防備になったのです。

この事の大事さに気がついたのは当時のアメリカ軍と日本軍、イギリス軍だけでした。3国は飛行機を積むことに特化した本格的な空母を作りはじめ実戦配備していきます。戦闘機をたくさん詰める専用の船を作れば、基地から離れたところでも制空権を奪えると考えたのです。
それも一歩先んじたのは日本軍でした。(日本も方向性を誤っていたことは、更にどんどん空母を作らず、役に立たない大和を「作ってしまったことで」明らかなのですが。)


空母ができた当時はまだ、海軍主力といえば「戦艦」でした。例えば戦艦大和のように、より大きくて頑丈で、より力のあるエンジンを積んで、そこにできる限り大きくて長距離を攻撃できる大砲を備え付ける。大きな大砲は大きな舟がないと詰めません。発射の衝撃で舟が揺れるようだと次の玉が照準できないから。
大型戦艦を攻撃の主力とし、それを守るように魚雷を打てる巡洋艦(戦艦より小さめで速度速い)や潜水艦を攻撃したりする駆逐艦(巡洋艦よりも更に小型で小回りがきく)を周りにつけて艦隊をくんだのです。

もともと「空母」はそんな大きな船、船団を空から守るために考案されました、戦艦を中心に大船団を組みその中に空母を一隻入れて敵の飛行機から身を守ったり偵察を行う。空母の役割はそういう風に限定的に考えられていたのです。

ここで日本軍はある画期的な戦術を思いつき、行動に移します。あまりにも画期的な概念。後にタスクフォース(機動部隊)とかボックスフォーメーション、アウトレンジ攻撃とか呼ばれるものです。それは・・・。


日本軍が考えたのは発想の転換。まず空母の集中運用。多くの船に少数の空母を組み合わせて艦隊の防空防衛に使うのではなく、速度の早い空母(作戦当時は六隻)を一つの艦隊に集めそれを艦隊の攻撃の主力にしたのです(ボックスフォーメーション)。空母には相手の飛行機を排除する戦闘機と陸地や艦船を攻撃する攻撃機を大量に積み込みます。それも訓練を繰り返した精鋭のパイロットを選りすぐり。
艦隊の高速性を保つためにその艦隊(機動部隊、機動艦隊)からは足の遅い戦艦を外し、円陣を組んだ空母を更に取り囲むように護衛の高速巡洋艦をつけ、更に潜水艦対策に駆逐艦を先行させます。足の早い船団で目標に向かい、遠くから攻撃したらすぐに逃げる「タスクフォース」(機動部隊)の誕生した瞬間でした。

もちろん、大型戦艦が攻撃してきたら、対抗する戦艦がないので打ち合いには弱い。しかし当時の戦艦(ミサイルはない)の射程距離はせいぜい40キロメートル。たいして空母の艦載機は数百キロ先から相手を攻撃出来ます。つまり敵の攻撃の届かない距離から、多くの艦載機で寄ってたかって攻撃しようというのです(アウトレンジ攻撃)。

もちろん戦艦がバカスカ打ち込む大砲の威力に比べれば飛行機が落とす爆弾や魚雷の量は限られます。しかし空母を一ヶ所にあつめ、しかも飛行機のパイロットの腕を上げ、ゼロ戦などの優れた飛行機の開発を行なって防衛力攻撃力を上げることでたくさんの砲弾を無駄撃ちするよりも効果的に攻撃できると考えたのです。

さて、この余りにも素晴らしい発想に溺れた?日本軍はこの機動部隊を使って真珠湾を攻撃します。空母が海軍力の主役であることを世界中に示したエポックメイキングな戦闘でした。どんな戦艦も空母の前には無力であることを世界中に知らしめたのです。

この時、日本軍は真珠湾にアメリカの空母がまとまって停泊していると信じ、敵の空母を沈めることで海の制空権を握ろうとしたのです。しかしアメリカ主力空母部隊は真珠湾にはおらず。(真珠湾攻撃をアメリカが知っていたという陰謀論はこの辺りからも来てるんでしょう)目的を果たせなかった日本軍は、新造空母を中心として再編成されていくアメリカ海軍に圧倒されていくのです。一方で日本軍は昭和19年に至るまであくまで第一艦隊は大和などを主力とする戦艦群でした。
自分たちが示した「画期的な戦術」は当然アメリカ軍も採用し、それに敗れ去ることになります。最初は空母対空母のの戦いに善戦した日本軍ですが、国力の差から、どんどん新造空母や艦載機を補充するアメリカにたいして対抗できなくなっていくのです(そしてミッドウェーで大敗)。
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さて、現在の空母ですが・・・。

飛行機の高性能化によって「空母」を持つことが難しくなっています。飛行機の大型化、ジェット化、高度化によって、海上の航空基地である空母も高いし大きいし高度な技術が必要になっていったのです。
例えばアメリカ軍の原子力空母は船に5000億円。更に飛行機に5000億円かかっていると言われています。それを動かす運用費も馬鹿になりません。また艦載機のパイロットは船というとても狭いところに離着陸するのですが、これは「一週間訓練を行わないと実践で使えなくなる」ほど繊細な作業と言われます。更には原子力空母に乗り組む人間だけでも5000人とかw。ちょっとした街ですね。

またアメリカ軍の空母はその水準を維持するために一隻の空母を実戦配備するためには都合3隻が必要と考えていると言われます。例えばAという空母を前線に配備すると、その裏ではBという空母が実戦配備に備えて乗務員の訓練などを行なっています。さらにその後ろでは兵器の近代化や故障の修理のためにCという空母が整備や改修を受けている。そんなローテーションで空母の実戦配備が維持されると。

更には原子力設備や飛行機を射出する「カタパルト」と呼ばれる装置。要するに経済的技術的に空母でアメリカに勝つことは不可能といえるでしょう。ロシアでさえ空母は諦めました。
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そんなハードルの高い空母。でも空母があれば艦隊の制空権を握れるんじゃないか。そういう警戒感を相手にもたせる武器です。中国が張子の虎と言われながらも空母を作るのは、海上での制空権を空母で確保するアメリカへの対抗心があるのは明らかでしょう。あるいはアメリカには対抗できなくても、アメリカ以外の海軍とガチで戦うことになった時、空母を持っている持っていないでは大きな差になりえます。フォークランド紛争でイギリスがハリアーを搭載した軽空母で効果的な空爆や艦隊護衛を行ったことも記憶には残っています。要するに外に出て行く「外洋艦隊」にはなんとしても欲しい船だと。

そこに登場したのが「いずも」です。公式にはヘリ搭載型護衛艦。相手の国土を攻撃する意図は有りませぬ。

(写真奥、22DDHというのが「いずも」です。クリックで拡大)
しかし大きい。船の長さ的には短距離離陸機(S/VTOL)が離発着できる長さとも言われます。もちろん本気で空母として使うには甲板を強化したり、飛行機を離着陸させる管制機能が必要で現実的では有りませぬ。(そもそも短距離離着陸機が売ってない。短距離型F35の実戦配備は先の話)F35の艦載機バージョンを買えたとしてもつめる機数せいぜい10機足らず。そもそもそんなことを日本の世論が許すのか???

しかし敵国(韓国や中国やロシア)からすれば「うん?日本は空母を持つつもりか?」と疑心暗鬼になってくれます。これは大きい。なぜなら敵国は「見えない空母」対策のためにさらなる無駄な出費を強いられるからです。今頃韓国あたりでは「いづも」程度の大きな船の設計に取り掛かっているかもしれませんねw(北朝鮮が主敵のはずなのになぜか日本に対抗して未意味にイージス艦を何隻も作ってしまう国だから。ホルホル)

一方中国や韓国にも「いづも」の利用価値があります。それは「日本が軍国主義化している」というプロパガンダのネタになるということ。早速人民日報辺りはネタにしているようですね。

注目点は日本が更に22DDHクラスの護衛艦をどんどん作ってくるかどうか。アベさんの服の下の鎧がどれくらいのものか、そこでも測れるでしょう。軍事マニアとプラモデル屋には嬉しい話なんでしょうが・・・。

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